【後編】おばあちゃん家を民宿に。岡谷市湊で紡ぐ、家族と地域の物語

櫛部 紗世

古民家民宿はなおかさんち

東京都出身。岡谷市湊にある祖母の家を「古民家民宿 はなおかさんち」として再生させ、2025年オープン。東京都岡谷の二拠点生活をしながら、家族とともに運営している。
地域とのつながり、広がるアイデア

岡谷の人々は「とても世話好き」だと櫛部さんは語る。「地域を盛り上げるために」と、自然と輪を広げてくれる人々との出会いも多い。「地域の方々が『この人紹介するよ』と、どんどん紹介してくれるおかげで、輪が広がっていくのがありがたい」と櫛部さんは話す。

そうした交流は、櫛部さんに新しい視点をもたらしている。「そういう風に岡谷でご活躍をされている方々に出会うと、“こんなことやってみようかな”というアイデアがどんどん生まれるんです(笑)」と櫛部さんは語る。単に、“民宿のオーナー”というだけではない。「東京にいても岡谷のことを考えたりしてます」と語るように、地域を盛り上げるために日頃から岡谷のことを大切に想っている。

街を知り、魅力を伝える

子どもの頃、櫛部さんにとって岡谷は、単に「祖母の家がある場所」だった。「畑仕事をする祖母を見ていたりとか、足元にあった光景が多かったですね」と振り返る。

しかし、民泊を始めてからは街全体を広い視点で捉えるようになった。お客さんを迎え、「岡谷市を説明する立場」になったからだ。「まだまだ勉強中なんですけど、お客さんに“岡谷市ってすごい街なんだね”って言ってもらえると”すごいでしょ!”って誇らしくて(笑)」「だから、今は岡谷市を知る、ってことに力を入れてますね」と語る。

二拠点生活で見つけた心の余裕

東京と岡谷での二拠点生活を送る中で、櫛部さんは「前よりも忙しい生活のはずなのに心に余裕ができた」と感じている。「100点じゃなくてもいい」と思えるようになったことが、日々の充実感に繋がっている。

櫛部さんにとって、岡谷は「癒されに来る場所」だ。諏訪湖と山々の風景、サイクリングを楽しむ人々、小学校から聞こえる子どもたちの声。ただその景色を眺めるだけで、エネルギーをもらえる。「民泊を始めたことで、自分の中ですごい心地よく過ごせている」と櫛部さんは話す。岡谷は櫛部さんにとって、心の拠り所であり、活動の原動力となる場所となっている。

関係人口の拠点を目指して

「この民宿が関係人口の拠点になってくれたらうれしい」-櫛部さんは、はなおかさんちの未来をそう描く。

「岡谷市を好きになって、定期的に訪れる人がいたら、それはもう関係人口じゃないですか」そう語る櫛部さんは、関係人口を増やすため、訪れる人々に岡谷の魅力を伝え続けている。

目下、構想しているのは、首都圏の人々に「岡谷市の日常生活を体験してもらうこと」だ。岡谷市民にとっては日常である畑仕事や草取りも、都会の人にとっては貴重な経験になると考えている。「地域の人と外の人を繋ぐ存在になりたい」と語るその姿勢は、地域の未来を見据えたものだ。「地域の人々と首都圏の人々がWin-Winの関係を築けたら嬉しい」と櫛部さんは語る。

地域へ、感謝の恩返し

「この活動を通して地域に恩返しをしたい」と櫛部さんは語る。「まだ民宿を始めて1年。ハイハイしているような感じですが、一歩一歩進んでいきたい」と笑顔を見せる。

その歩みは、岡谷の未来を支える確かな一歩となっている。地域の人々との絆を深めながら、櫛部さんはこれからも岡谷の魅力を発信し続ける。「地域の方々に感謝を返していける活動を続けたい」と語るその姿には、深い地域愛にあふれている。