地域の“知の拠点”を目指して 株式会社笠原書店
地域の“知の拠点”を目指して
株式会社 笠原書店
概要
| 事業内容 | 書店 |
|---|---|
| インタビュー | 笠原 新太郎 社長 |
街から本屋が消えていく。そんなニュースを耳にすることも珍しくなくなった。出版市場は、1996年にピークを迎え、以降縮小傾向にある。当時は2兆6564億円を数えた雑誌・書籍の推定販売金額は、2024年には1兆56億円となった。約30年間で半分以上規模を縮小させたこの業界の中で、岡谷市には、地域に愛され続ける書店がある。それが笠原書店だ。
2025年に創業100年を迎えたこの書店には、創業から抱えてきた理念がある。ーー「我々は文化の配達夫である」。
利益追求だけでは続かない。地域の役に立って、地域に愛され続けなければならない。どのような想いでこの100年をつないできたのか。3代目社長笠原新太郎さんに話を伺った。
「業界的には、出版業界、書店業界ってやっぱり、完全にダウントレンドなんだよね」——笠原社長は現状をそう言い切る。市場が縮むいま、街の書店はおしなべて危機に瀕しており、創意工夫が必要不可欠だ。だから笠原書店は“本だけを売る”発想に固執しない。
書店には、強みがあると話す。「本屋ってさ、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、幅広い層がふらりと立ち寄ることができる場所なんだよね」
だからこそ、売れるものも本だけに限らない。本を軸に文具や雑貨の品揃えを厚くし、本格的なガチャガチャコーナーを設置したり、近頃はメダカやリンゴの販売まで行ったりしている。さながらカルチャーのるつぼのような存在だ。
昨年(2024年)、創業100周年を記念して作られた笠原書店のブックカバーは、戦前に使用していた包装紙を文庫本用に復刻したものだ。
「この包装紙にあるように、うちの祖業は『書籍、雑誌、文具、楽器、運動用具、和洋帳簿、紙類』だった。だから、本以外のものを扱うのはうちの『当たり前』なんだよね」と語る。その豊富な品ぞろえは老若男女さまざまな市民の生活を支えてきた。
とはいえ、笠原書店の軸が本であることは100年間揺らいだことがない。
「本を触っているときが一番楽しい」と社長は語る。社長に就任して30年近くになる。経営者としての仕事が多いものの、一番好きな時間は現場に立っている時間だ。
実際に現場に出て、お客さんとコミュニケーションをする中で、需要を肌で感じとっている。
「目当ての本があるなら、ネットに勝てない。ふらりと来て『こんな本があるんだ』と発見する場を作りたい」というように、書店を「出会いの場所」とすべく、常に工夫をこらす。
「地域の、岡谷の『知の拠点』になりたいんだよね」--そう話す社長の言葉通り、笠原書店には地域の歴史や文化に関する書籍が豊富に揃う。これは単なる商売ではなく、地域の学びを支えるという使命感の表れだ。
「岡谷は地味だけど、住みやすい街だよね」——笠原社長は笑顔で語る。中心市街地には商業施設も病院も映画館もコンパクトにまとまり、「派手じゃないけど、必要なものが全部揃ってる」と評する。
「そんな街の魅力の一部として、笠原書店を感じてほしい」と願いを込める。
岡谷市民が誇らしげに「おらほの街には笠原書店があるから」と言える存在へ。今日も変わらず店頭に立ち、街と共に歩み続ける。